FM TOWNS用3D CGソフト「EASTRAY」 (1990年前半のCGレンダリング)

1989年に富士通より発売された32ビットパソコン「FM TOWNS

マイナーとはいえ様々なソフトが市販・フリー問わずリリースされていたマシンであるが、その中でも代表的なソフトと言うべき3DCGレンダリングソフトである「EASTRAY」を紹介する。

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FMシリーズ専門誌「Oh! FM 1990年9月号」にて初登場したフリーソフトで、無料ながらシェーディング・テクスチャマッピング・環境マッピングアンチエイリアスと一通りの機能を揃えたレイトレーシングによる描画を行い、当時としては、下手したら有料で発売されたソフトよりも高品質なCG画像を作成することができた。

今でもBlanderといったソフトを使ってCGレンダリングを行うことがPCの利用用途の一つとしてあるが、30年以上も前からPCの用途は変わっていないのである。

昨今のCGレンダリングソフトのようにGUI操作で空間上にモデルや光源を配置しプレビュー画面がリアルタイムで表示されるわけじゃなく、テキストファイルに頂点の数値や材質の設定などを直接記述していくという手間のかかる作業を行い、実際にレンダリングするにしても初期型TOWNSでは一晩、後期型に搭載された486 CPUでも何十分とかかる始末で、思い通りの画像が出てこなかったり何かの拍子にレンダリングが途中で中断してしまったら作業時間が全て水の泡と化す。

Oh! FM TOWNSの付録フロッピーやユーザーが制作した応募作品をCDにまとめた「フリーソフトウェアコレクション」(フリコレ)にバージョンアップ版が何度か載り、最終バージョンはOh! FM TOWNS付録でついていた「天晴CD Vol.1」及び「天晴CD Vol.2」内に収録しているVer1.98のようだ。

初期のバージョンではテキストファイルを読み込んで画像を出力するだけのプログラムだったようだが、1992年にある程度作成を補助するためサポートプログラムツールが追加されたものの、これも実質テキストエディタ・画像表示・プレビューとレンダリングプログラムの実行を行うだけの複合プログラムでしかなく別々のソフトを切り替えて立ち上げる必要が無くなるだけで根本的な手間は解消されない。

 

何も編集しておらず面白みにかける映像かもしれないが、EASTRAYのサポートプログラムを起動してサンプルのファイルを開きレンダリングを実行する一通りの作業を動画にしておいた。

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エミュレータ津軽」を使用しており再現性の問題から動画最後の画像表示時に右側の表示が欠けるという不具合はあるが、CPU 66MHz・FPU付設定で自分が当時使っていたFM TOWNS 2MX相当ではこの程度の質素なCG画像を出力するにもこんな速度でレンダリングを行わなくてはならなかったという参考にはなると思う。

 

当時のTOWNSユーザーに重宝され、Oh! FM TOWNS紙面上でも何度も講座特集が組まれたり、フリコレにも様々な単体作品やゲーム用のグラフィック画像の制作に使われていたものだが、悲しいことにFM TOWNSそのものが忘却の彼方に追いやられている御時世、EASTRAYもまたネットを調べた限り1サイトだけ制作物をまとめたサイトが残っていただけでほぼ資料が残っていない状態となっている(※:他に記事が書かれたblogがかつて一件だけあったものの消えてしまっている)。

今更なんでこんなソフトの記事を書いたかというと、自身が幼少期に影響を受けたコンピュータの歴史がこんなにも簡単に消えてしまうのはやるせない気持ちになり、誰もやってくれないので一人虚しくまとめていくしかないからなんですね。知りたくもない、知る需要がないから誰もまとめないのかもしれないですが。