やなせたかし氏 日本人の正義とは困った人にパン差し出すこと

NEWSポストセブン

やなせ:「アンパンマン」を創作する際の僕の強い動機が、「正義とはなにか」ということです。正義とは実は簡単なことなのです。困っている人を助けること。ひもじい思いをしている人に、パンの一切れを差し出す行為を「正義」と呼ぶのです。なにも相手の国にミサイルを撃ち込んだり、国家を転覆させようと大きなことを企てる必要はありません。アメリカにはアメリカの“正義”があり、フセインにはフセインの“正義”がある。アラブにも、イスラエルにもお互いの“正義”がある。つまりこれらの“正義”は立場によって変わる。でも困っている人、飢えている人に食べ物を差し出す行為は、立場が変わっても国が違っても「正しいこと」には変わりません。絶対的な正義なのです。

これはやなせたかし先生が敗戦で味わったことだな。戦時中は日本が正義だと信じていても、戦争に負けた瞬間に今まで教わってきた価値観が180度変わってしまった。だけど、どんな事があっても絶対に変わらなかったものは「愛と献身」ということ。


アンパンマンの正義は自己犠牲をテーマに描かれているが、登場当時は頭の固い大人たちに「顔が無くなるなんて残酷で教育に良くない」「子供はこんな話喜ばない」などと批判された。でも、理屈が分からなくても物事の本質が本能でわかる子供たちには、ちゃんとアンパンマンの意味が理解できた。
アンパンマンが人気なのは強いからでもカッコいいわけでもなく、他人の為に自分を犠牲にしてまで助けようとしている姿なのである。


子どもたちとおんなじに、ぼくもスーパーマンや仮面ものが大好きなのですが、いつもふしぎにおもうのは、大格闘しても着ているものが破れないし汚れない、だれのために、たたかっているのか、よくわからないということです。


ほんとうの正義というものは、けっしてかっこうのいいものではないし、そしてそのためにかならず自分も深く傷つくものです。
そしてそういう捨て身、献身の心なくして正義は行えませんし、

また、私たちが現在、ほんとうに困っていることといえば物価高や、公害、飢えということで、正義の超人は、そのためにこそ、たたかわねばならないのです。

アンパンマンは、やけこげだらけのボロボロのマントを着て、ひっそりと、はずかしそうに登場します。自分を食べさせることによって、餓える人を救います。それでも、顔は、気楽そうに笑っているのです。


さて、こんな、あんぱんまんを子どもたちは、好きになってくれるでしょうか。それとも、やはり、テレビの人気者のほうがいいですか

絵本「あんぱんまん」あとがきより引用



あんぱんまん (キンダーおはなしえほん傑作選 8)

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