1989年に富士通が発売したCD-ROMドライブ&32bit CPU標準搭載パソコン「FM TOWNS」
今更25年以上前にシリーズ機の販売が終了したパソコンなんだから話題が出ない(Lenovo傘下になった富士通ブランド広報担当者すらFMVシリーズ機扱いしたりどういったパソコンだったかわかってない)のは当たり前なんだけど、1992年頃には商用としては終了しているMSXや当時は比較されることが多かったX68000が一部コミュニティで活発な動きが現在でもあるのに比べて、TOWNSは本当に話題に上がることがない。
そしてつい最近「どうしてFM TOWNSには勝手移植や自作ゲーム類が出てこないのか」という意見が某大手SNSで言及されていった。
自分自身はFM TOWNSに特別な思い入れもあってなんの役にも立たないが色々書いているし、かなり規模は小さく数えられるほどの物しか出てきていないとはいえ今でも活動している人もいて(オープンソースのエミュレータどころか互換BIOSも開発されて実機が無くとも当時のソフトウェアを動かせるようにされている)この意見にはうーーーーん?????と疑問符しか付かなかったが、とりあえず思い当たる節を色々書いてみる。
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制作活動をしていたコアユーザーの絶対数
元々TOWNSの開発コンセプト自体「野鳥を調べられる電子辞書ソフトがあったとして今までのパソコンは文字や静止画でしか野鳥の情報を見れないが、TOWNSなら文字のみならず鳴き声・飛んでいる様子と直感的な情報で見れる」という新しい情報端末(これが当時どれほどの需要が有るのか知らない)と考えて開発していた節があり、当初予定していた一般向け販売が低迷したら教育用に販路を広げたりと、クリエイター・開発者向けというよりは受動的なユーザーに向けた売り方重視に見受けられ、実際何か作るというよりは市販ソフトを買うか誰かが作ったフリーソフトで遊ぶだけという人がFM TOWNSを所有していた人でも大半(MSXやX68000もそうだろうが、それ以上という意味)。現在ではなく当時の話をする場合でも、いくら完成度の高いソフトが数本出ていたとしても数が無いんだから、逆にそれらの話題が終わったらそれ以上会話が続かない。
まあ富士通はFM TOWNSをコミックマーケットにも出展していたりアニメ/漫画ファン向けも狙っていたようだが、当時の制作環境ではTOWNSを生かすのは難しかった(タブレットやスキャナも普及しておらずマウス描き)だろうし、仮にそういう層がTOWNSで創作活動していたとしても、絵描きなら猶更当時より快適な環境を駆使して綺麗な絵を描きたいと思うだろう。ドット絵みたいなものだったら別にTOWNSでなくても表現できてしまう。
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開発のしにくさ、インパクトが作りにくい
これは前々から書いているのだがFM TOWNSはカタログスペックだけなら高性能に思えるけど、実際はゲーム用途に向いてない性能。
ちょっと強力なスプライト機能はあるけど逆にそれ以外にゲーム用途向けでは当時2Dゲームでは必須なBG面やラスター割り込みがない、横スクロールすらトリッキーなテクニックを駆使しないとスムーズに行えないなど不自由な部分が目立つ。
そして、このトリッキーな方法とかFM TOWNSの開発資料が上記の該当記事にある通り当時のOh! FM TOWNSにしか掲載されてなかったり技術伝承が行われず、当時のフリーソフトのゲームでもこれらの知識さえあればもうちょっと完成度が高くなりそうなのに使われていないという残念な形となってしまった。
開発環境にしても当時のレトロPCでは一般的なBASIC言語(F-BASIC 386)ですら別売、TOWNSの性能を最大限に生かそうとするならよりハードに近いC言語やアセンブラが必須になるがまだ市場が形成されていた1993年以前の段階ではすべて揃えるとなると10万円超え、93年には普及帯(それでも4万だが)の廉価版が出たが既に成熟期に差し掛かりWindows 95が発売されて一気に市場が消滅する95年の2年という短い期間しかない、言語のみならずBASICで画面モードの制約を緩和する機械語ルーチンやC言語で垂直同期割り込みで関数読み出すライブラリといった便利なものすら公開が94~95年と遅すぎた。
また、この項目先頭で書いたがカタログスペックだけは良いせいで、実際は苦労の末に実装した表現でも「これくらいならTOWNSでできて当然でしょ?」と勘違いされやすく、開発におけるコストパフォーマンスが悪すぎる。
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実際に作ったところで反応薄過ぎ
話が堂々巡りなのはわかってるけど、冒頭で「FM TOWNSには勝手移植ないのか」って事の発端を出したが、勝手移植なんて自分がDOOM・CELESTE・Wolfenstein 3Dとこの令和の時代に何個か開発している。なのに、なんでそんな疑問を持たれるのか不思議でしようがないが、実際に作ったところで反応が無いんだから無駄としか思えずモチベーションを保ち続けるのは難しい。
話題を作ろうとしても話題が起きない→無駄だとわかってるので話題を出さなくなるのスパイラル
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OSが別売
単に市販ゲームを遊ぶ分なら問題はないんだが、フリーゲームを遊んだり配布して遊んでもらうならそれを実行するTownsOSが必須となる。が、このTownsOS自体が当時は高価な代物(単体2万以上)で、今でもたまに中古が出回ることがあるものの数千円では買えない代物となっている(V1.1系統なら安いが使い勝手が悪かったり動かないソフトが出てくる)。
OSまで無償化公開されたX68000とは違い、FM TOWNSは互換BIOSまでは有志経由で作られたもののOSは流石に手を付けられないので、エミュレータと互換BIOSを導入したとしても完全にフリーで遊べる状態とはならず、取っつきにくい原因になっている。
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(番外)数少ない作ってる本人はその手のコミュニティと関わりたくない
他の少数FM TOWNSユーザーはどうかはわからないし、やっていることと矛盾しているような気もするが、自分自身はレトロという類のついたコミュニティはどうも苦手。
いや、レトロゲームも遊んでるしレトロPCの知識も十分にあるんだけど、今時のゲームとかのほうがやってて面白いよね?という感想の方が強いんで実際は固執しているようでそれに固執していない(FM TOWNSも動作検証用にマーティーは持ってるけど、実機じゃなくてエミュで十分だよねとしか思ってない)。
作った物とかを時折開催されているレトロゲーム/レトロPCの実イベントで実機マーティーも所有しているんだからそれ使って公開すればいいんだろうけど、偏見かもしれないがその他の参加者と会話しても「昔のゲームはよかった。でも今のはだめだ。」とかそういう類の話が出てきそうである。もちろん、そんな話が出たら気分悪くなるんで会話止める。そういう訳で行く気にならない。