俺は一体何をやっているのだろうか?メガCD修理職人を目指しているのか?
前回のメガCD修理が面白かったので、調子に乗ってまた別のジャンク品で売られていたメガCDを購入してみた。
今回の機種は電源が入らないとかCDが読み込まないとかいう類のものではなく、起動時に拡大縮小回転するアニメーションが流れるメガCDのロゴマークがノイズが走ったかのようにバラバラになって化けて表示されてしまうというもの。CD再生メニューは開けるものの動作が非常に重く、バッテリバックアップ初期化メニューも正常に表示されない、時折動作が完全に停止したりもする。
時折ヤフオクでもこの現象が発生したメガCDが出品されてたりするものの、海外掲示板では修理事例があるのに日本語サイトでメガCD修理を解説しているところはほとんどコンデンサ・ドライブベルト・ピックアップユニットの交換だけで、この故障の原因や修理内容について解説しているところは自分が確認した限りでは見かけない。
この故障の大体の原因は液漏れしたコンデンサでメガCDを制御しているASICとVRAMの間を繋いでいるパターンが腐食してアドレス線かデータ線かが断線していてデタラメなデータがVRAMに読み書きされるために起きている(ASICやVRAMそのものが壊れている可能性ももちろんある)。コンデンサを全て交換しただけでは既に腐食が進行しているので改善されることはない。
これを修理するのには、まず断線している箇所を特定する。
メガCDのASICのピンアウト、VRAMのピンアウト、更にASICとVRAMとの回路図がインターネットに上がっているのでこれを見ながらテスターで該当するASICとVRAMのそれぞれの足を通電しているか確認していく。Excelやスプレッドシートで対応表を兼ねたチェックリストを先に作っておくと分かりやすい。
すべて通電している場合はパターンの切断ではなくIC側の故障で修理が難しくなってくるが、一部のパターンが断線状態になっているのが確認出来たら修理できる見込みがでてくる。
次は基板に配線されているパターン図を確認する。基板の裏側からライトを当てることで配線されたパターンが透けて見えるはずなので、断線しているASICとVRAMの足先のパターンがどのスルーホールまで伸びているかを追っていき、またこのスルーホールとICの足にテスターを当てて通電しているか確認する。通電していなければこのスルーホールそのものかこの間のパターンが断線していることになる。
自分が購入した機種ではASICの17・18ピンとスルーホール間のパターン、IC11 VRAMのVCCに繋がるC28コンデンサ、IC12 VRAMの16ピンとその先のスルーホール間が断線状態だった。おそらくC11とC28コンデンサから漏れた電解液が回りを腐食しているのだろう。
スルーホールをニードルで広げた後、0.08mm径 外径0.65mmのより線を捻じって差し込んでスルーホールに半田を流し込んで固定した。
赤で囲った部分がIC12 VRAM 16ピンの断線修復用ジャンパー線、黄色で囲った部分の裏側はC28コンデンサの+端子までより線の伸ばして半田した後スルーホールにも半田を流して余分なより線をカット。
ASICの17・18ピンの断線も長めにより線を基板裏側からスルーホールに差し込んで、元のパターンに沿うようにより線をピンセットで曲げていきASICの足まで延ばした。
青で囲った部分がスルーホールから伸ばしたジャンパー線。ASICへの足にジャンパー線を半田するコツはできる限り半田ごてに半田を付けないこと。半田ごての先に丸く半田が載る程度では多すぎ、コテの表面にだけ半田が載っているくらいで丁度よい。ピンセットでASICの足より手前のジャンパー線を押さえて足とジャンパーに上からコテを押し当てて加熱し、既にあるランドと足の間にある半田がジャンパー線にまで溶けるようにするのがいい。
捻じったより線がほどけないか心配な人は、足先との半田付けが終わったら足先をピンセットで押さえてより線全体の表面に半田を流しておいていい。
それではこのジャンパー線による修復によってぐちゃぐちゃに化けていたメガCDロゴのグラフィックがどうなったかというと・・・
見事復活
正常にメガCDロゴマークが拡大縮小回転し続け、CD再生メニューやバックアップメモリ画面も正常に開くことができた。
ロゴマークそのものが出ないという場合、68000とメインDRAM間、CDドライブとメインボード間で断線しているというケースもある。VRAMに断線がしている箇所が無ければこちらも確認する必要がある。
※追記:このVRAM復旧作業後にテストしていたのだが、音楽CDの読み込みは行えるのにゲームディスクが読み込めないという現象が発生した。ピックアップユニットが悪いのかと思って、ジャンク品だったメガCDからCDドライブを移植しても同じく音楽CDは読み込めてもゲームディスクが読み込めない。VRAMの問題と同様にパターンの腐食による断線が原因で、CDホストインターフェース・エラー補正を行うIC「LC8951」の34ピンが断線状態だったので接続先であるHC00の8ピンまでジャンパー線を飛ばしたら、問題なくゲームディスクが読み込めた。
CDドライブそのもの、ピックアップユニットを交換してもディスクが読み込めないという人はここもチェックしておくといい。
前回も言った通り、メガCDの故障原因はほぼコンデンサの液漏れによる腐食で放置していけばそれだけ修理を困難になっていってしまうので、現段階で初期のコンデンサのまま正常に動いていたとしても早めに交換をしておいた方がいい。表面実装コンデンサを剥がすのよりも、黙々とテスターで通電テストを繰り返す地道な確認や0.5mmピッチの足に隣接する足やランドとショートしないように半田する細かい作業が必要となってくる。コンデンサの全交換は半日もしないうちに終了したが、このパターン断線の確認と修復は1週間以上費やしてようやく解決することができた。先延ばしすればするだけ何十倍もの時間と労力がかかる。