2年半近くも探し求めてようやく「システムショック 日本語版」を入手。
元が1994年のPCゲームで知らない人が大半だと思うので説明。System ShockはLooking Glass Technologies社が開発・Origin Systems社が販売を担当した1994年3月(プレイステーションやセガサターンが発売される前)に発売したFPSゲーム。開発にはあのウォーレン・スペクターも携わっている。
続編のSystem Shock 2が1999年に発売されたり、そのSystem Shock 2のスタッフが携わっている後継作品「Bioshock」は有名だろう。
舞台は2072年、宇宙ステーション「シタデルステーション」に関するデータを盗もうとして不正アクセスで捕まった名もなきハッカーが主人公。TriOptimum社の副社長エドワード・ディエゴはその腕を見込んでハッカーに解放の条件として過去の事故のデータの消去を依頼するが、同時に人工知能「SHODAN」の論理プロテクトまで外してしまう。解放とともに見返りの報酬としてハッカーは軍事用神経インプラントを身体に埋め込んでもらい、術後安定のためにハッカーは6か月間の冬眠に入るが、目覚めてみるとシタデルステーションはSHODANによってミュータントにされた人間とサイボーグが占拠していたというストーリー。
このゲームの特徴となっているのがオーディオログというシステム。生存者が誰もいないシタデルステーションで、主人公は生前の人間が残した音声記録を再生して眠っていた間に何が起きていたのか知ることとなる。ゲーム中に音声でプレイヤーに情報を伝えることによって進行を止めることなくスムーズなゲーム展開を実現したこのシステムは、System Shock 2やBioshockでも受け継がれ、更にDOOM3やDead Spaceでも同じシステムが実装されたことを考えると、このゲームが後世のゲームに与えた影響力の大きさは計り知れないだろう。
またFPSとしても、上半身だけを動かして物陰から顔をのぞかせるリーン動作、立つ・しゃがむ・這うと3段階の姿勢変更、はしごの昇り降り、一つの武器でも弾薬の種類が複数用意、敵の種類によって武器の威力も変わってくる(EMP系の武器ならミサイボーグには強力だがミュータントには食らわない等)、手りゅう弾や地雷といったグレネード類を投げたり設置する、ライト点灯・敵のステータス表示・シールドといった装備類のアップグレード等、今では当たり前のように実装されているシステムをDOOMが発売されていた同じ時代に既に実装されており、お手本となるゲームが不在な中で一体どうやってここまでアイディアを思いつくのか、また思いついたところで実際に実装出来たことに驚くばかりである。
だが、こんなにも革新的で与えた影響力の高さも考えたら歴史に名を残すようなゲームなのに知名度は低く当時の売上もそこまで高くなかったのが現状である。何故かというと様々な原因が考えられる。
一つはその操作性。リーン動作や視点の上下移動、姿勢の変更などはできるのはいいのだが、そのキー配置が尋常じゃないのだ。
ここにプレイヤーの移動に関するキーボード側の操作方法を記載すると、
SXキー・・・前後移動
ADキー・・・左右に振り向く
ZCキー・・・サイドステップ
QWEキー・・・リーン動作(姿勢が傾いた後は、Wキーを押さないと元の姿勢に戻らない)
RFVキー・・・上下視点移動
TGBキー・・・立つ・しゃがむ・這うの切り替え
スペースキー・・・ジャンプ
Shiftキー・・・ダッシュ
こんな風に一動作一キーで無駄に押さなきゃならない箇所が多く、マウスで視点を動かすにしても動かしたら即視点が移動するわけじゃなく表示されたカーソルを該当箇所まで持ってきてはクリックしていくという面倒さ、更にキー配置はデフォルトで固定されている始末。プレイヤーをいかにゲームの世界にいるという実体感を持たせるために動きや視点に関する束縛を解き放とうとしたんだろうが、どうすれば快適な操作性になるかまでは思いつかなかったかのだろうか。今では当たり前のマウスルックという考えだけど、当時は誰も実現できていなかったのだから仕方ない。
二つ目の原因としてPCのスペックの高さ。あまりにも機能が詰め込まれた結果、要求スペックで書かれているCPU 486 33MHzでのプレイでは動きが重たく、66MHz〜100MHzでやっと、高解像度設定であればPentium機でプレイしないと快適ではなかった。
また先にオーディオログの事を書いたが、実際に音声が流れたのは最初に発売されたフロッピーバージョンではなく、3か月後に発売されたCD-ROMバージョンになってからなのである。CD-ROMドライブが搭載されていないPCもあったために売上が懸念されてフロッピー版を発売することとなったのだが、ゲームの進行を止めて表示された文字を読んでいくという今までのゲームと同じスタイルとなってしまい、ログが表示される度にSystem Shockの世界から強制的に現実世界に戻されてしまう事となる。後出しで完全版が出たところで最初に出たバージョンでの評価が一般的となってしまうだろう。
あとはSystem Shock 2、BioShockのクリエイターであるKen Levine氏もネタにしていたボックスアート。
日本語版では主人公の後姿とSHODANというまともな構成になったものの、オリジナルの英語版はゲーム終盤で出てくるElite Cyborgの顔ドアップという構成で、何故主人公でもラスボスでもないキャラを選んだのか意味不明すぎるデザイン。店頭でこのボックスを見て惹かれるような奴は少数派だろう(俺は少数派に入る)。
まあ、話が長くなっちゃったけど今回見つけた日本語版の情報
発売は1996年と結構後の方で、販売担当はエレクトロニックアーツ・ビクター社、日本語版移植担当はインフィニティー株式会社(作品履歴2000年以前に載っている)。
ボックス、CD、マニュアルにはDOS/V版と書かれていたが、実際にはPC-98版とのハイブリッド版でCDに一緒に収録されている。
以下は英語版との差異
- インストールプログラムは日本語表記。DOS/V環境でないと正常に表示されないが、文字化けしたままでいいならそのまま設定し続けることが可能。サウンドカード、インストール先の設定はあるものの英語版と違いムービー画質、ジョイスティック設定が無い。
- ゲーム本体は日本語フォントなどを組み込まなくても日本語化される。ただし、実行にはゲームCD-ROMが必要でMSCDEX.EXEも組み込んでおく必要がある。DOSBOXで実行させるなら「MOUNT D D:\ -t cdrom」(D:\には実CD-ROMドライブパス)を入力してマウントさせCD-ROMを入れておくこと。
- VESA1.1対応ビデオカードは必須。英語版とは違い無いと起動前にエラー表示される。
- 基本的にはCD-ROMバージョンベース。ムービーは高解像度、ログは音声あり。
- ゲーム解像度は320*200、320*400、640*400の三段階から選択可能。デフォルトは640*400設定。英語CD版にあった640*480はなし。
- 音声は英語、文字の表示は全て日本語、マップに記載できるメモは英数字のみ。
- ローカライズの出来は十分だと思うが、ちょっとSHODANの口調がイメージと違う(必要以上に偉そう)。