アーケード版から様々なアレンジを加えられ1990年12月に発売されたスーパーファミコン版「グラディウスIII」
理不尽な難易度だったアーケード版とは違い、家庭用ゲーム機向けにマイルドな難易度に変更されたものの、コナミのスーパーファミコン参入第一弾タイトルということでプログラミングノウハウなどがなく、処理落ちやスプライト欠けが目立つタイトルとなっていたが、発売から28年を経過した2019年にスーファミ本体よりも3倍高速なCPUであるカスタムチップ「SA-1」で動くようにするハックロムが開発され話題となった。
スーパーマリオRPG・星のカービィ スーパーデラックス・実況おしゃべりパロディウス・ミニ四駆 シャイニングスコーピオンなど、SA-1を採用されたタイトルはそこそこあり入手が容易で、SA-1採用のカートリッジ内のマスクROMを改造版グラディウスIIIを書き込んだROMに置き換え、バックアップRAMを増設(メインメモリ替わりに使われている)すれば、実機でも動作させることができる。
前々から実機上で動いているところをみたいのと半田付けの練習がてら製作してみたいとは思っていたが、EPROM変換基板やEPROMそのものの入手が手間で手つかずにしていたものの、魔改造スーパーファミコンを製作してスーファミ実機が手元にあり、更に変換基板が980円、UV-EPROM M27C322が10個入りで2200円で売っているところを見つけて、製作費も暇つぶしとしては安い出費に抑えられるということで製作してみた。
今回改造に使用したSA-1採用タイトルの「ミニ四駆 シャイニングスコーピオン」
地元のブックオフで250円で売られていたので購入。ハードオフでもジャンク置き場に110円で投げ捨てられている。
基板中央右寄りにあるこのチップ「SA1」(型番:RF5A123)こそ今回の心臓部となるパーツ。
スーパーファミコン本体に採用されているCPU 5A22(65C816) 3.58MHzを、10.74MHz駆動と3倍速にしたものだ。スーパーファミコンのカートリッジはメモリバス、周辺チップバスがそのまま出ているので、本体側のCPUは動かさなくともこのCPUからスーパーファミコンを制御できてしまうのだ。
※追記:よく調べたら、スーファミ本体のビデオチップ(PPU)とサウンドチップ(SPC700)はSA-1側から操作できないようで、スーファミ本体側のCPUから操作しているよう
なお、同じくSA-1採用タイトルでSRAMの貼り換えが不要という「柿木将棋」も入手しておいたのだが、基板がシャイニングスコーピオンのものよりも縦長でEPROMをカートリッジに入れた際にどうも基板が上手く入らず、軋んで半田割れが起きたのか起動しなかったので、SRAMの貼り換え作業の手間があっても改造にはシャイニングスコーピオンを使う方が確実かもしれない。
まずはマスクROMの貼り換え
SA-1チップ上部にあるこのSOP 42ピンのチップがマスクROMとなる。
上の動画ではヒートガンで焙って剥がしているが、自分はフラックスをICの足に塗って半田コテ先でランドを温めながら足と基板の間に細いピンセットなどを差し込んで足を曲げながら開いていった。
マスクROMを剥がしたあと
今回の改造で使う秘密兵器
SOP 42ピンをDIP 42ピンに変換するアダプター
通常では全く大きさの違うICをなんなく貼り付けることが可能となる
DIP 1ピンが基板から見て右側、マスクROMのランドと変換アダプターのU字溝が合うように置き、両基板のランドとU字にフラックスを塗って半田付け。
よくランドの古い半田を吸い取っておき半田付けの際も抑えておかないと、変換アダプター右側が下の基板から若干浮かんだ形となり、EPROMを半田付けしてカートリッジに入れる際にROMがカートリッジケースとぶつかって基板が軋む可能性があるので注意したい。
変換アダプター上部が基板からはみ出す形となるが問題ない。
そして忘れてはいけないのが、SA-1の左側、CR2032の下にあるバックアップ用SRAMの貼り換え
シャイニングスコーピオンのバックアップRAMは32KB(256Kbit)の物が使われているが、これを128KB(1MBit)のものに張り替えておかないとSA-1対応版グラディウスIIは動かない。
マスクROMと同様に足を曲げてICを剥がした後、
絶縁層で隠れているランドをマイナスドライバーで削って導体をむき出しにし、フラックスを塗って半田を載せておく
貼り換えに使用したSRAMは秋月電子で売られていたSRAM「M68AF127B」
IC 1ピン目が右上になるように、IC表面の刻印が基板から見て逆さになるように配置する
ついでにSRAM上にあるCR2032バッテリーバックアップもソケット化しておいた。
バックアップRAMをメインメモリ替わりに使用しているが、副産物としてハイスコア・オプション設定の情報が電源を切っても保持されるので長期間保存しておきたいという人はソケット化して新品のCR2032に交換しよう。
ついでに自分が製作したクレジット9 & アーケードモード標準開放パッチ適用済みのSA-1対応版グラディウスIIIをM27C322に書き込んで変換アダプターに半田付けして完成
変換アダプターが基板上まではみ出していてカートリッジ内の突起とぶつかる箇所があったので削っておいた。
無事動作確認
普通にプレイしていても全く処理落ちしない(実機上だとカバードコア戦時に若干処理落ちするらしい)し、いちいち連打しなくてもクレジット数は上限でアーケードモードも選択可能なスーパーファミコン版グラディウスIIIの完成
話は逸れるが、スマホの写真じゃわかりにくいけど、仕事場の液晶ディスプレイではD端子出力スーパーファミコンはボヤけていたが、自宅のアクオスでD端子出力をしたところRGB出力とまではいかなくとも十分ドットクッキリハッキリな画質で表示された。
シューター(シューティングゲームプレーヤー)よ、これがスーファミ版グラディウスIII最強(凶)プレイ環境だ