知ったかぶりほどアタリショックという言葉を使いたがる & Atari 2600のスペック

ガジェット通信

皆さんは「アタリショック」という事件をご存じだろうか。大手ゲームメーカーATARI社がゲーム業界に巻き起こした事件の1つである。要約して説明すると、当時のATARIサードパーティーに対してライセンス管理を行っておらず、誰でも自由にゲームを販売できる体制にあった。


しかし中身はどんでもないクソゲー(中にはバグで動かない物まで存在)という物が乱造され、次第にゲーム業界そのものが衰退していってしまったのだ。この影響でATARI社のハードだけでなく同時に任天堂や他社のゲームまでも売れなくなってしまった。


これに対抗するために任天堂はゲーム機としてではなく“ロボット”や“光線銃”として販売し復活を遂げたのは有名な話である。

全部ツッコミどころがありすぎてキリがないが、アタリショックって言葉が使いたかっただけじゃんという感じ。
アタリショックが発生した要因は、Atari 2600の後継機種であるAtari 5200やAtari 7800が普及しなかったのと、ゲーム以外にも使用できて性能も遥かに良かったホームコンピュータが登場したっていうのが大きい。
ifの話になるけどソニーが「00年代も初代プレイステーションを現行機種のままにします」って言ってWiiXbox360と戦っているようなもんである。
そもそもアタリショック自体、都市伝説みたいなもんだから信ぴょう性が薄いゲーム話なんだが。


日本ではアタリショックという言葉だけが広がっただけで、その原因のゲーム機となったAtari 2600があまり知られていないという現状がある。爆発的なヒットとまではいかなかった(日本では発売がファミコンと同じ1983年、値段も1万円高かった)ので馴染みが薄くてどんなゲーム機だったか知らない人が多いと思うので、ハード的な解説をしてみる。
といっても、俺自身も海外Wikiや仕様書かれたサイト見ただけなんだが。


Atari 2600は1977年にアタリ社から発売されたゲーム機。2600という数字は後継機種の5200が発売された時に付けられたもので、発売当初はAtari VCS(Video Computer System)という名前だった。この当時、パソコン自体も珍しい(パーソナルコンピュータという言葉すら普及していない)代物で、今ほどCPUやらメモリも安くなかったので随所で安くするために工夫している。


CPUは6507という、AppleIIファミコン(カスタム品)にも使用されていた6502の廉価版。6502は最大64KBまでのメモリ空間にアクセスできたが、6507は8KBまでしかアクセスできず、外部割込みなども使用できなくなっている。動作周波数は1.19 MHz(NTSC色副搬送波周波数3.58MHzの3分の1)。


8KBしかメモリにアクセスできないと書いたが、メインメモリも128バイト(キロでもメガでもない)、ゲームカセットROMは4KBとなっている。ただし、流石に少なすぎるので後期のゲームだとカートリッジ側に128バイトメモリを付けて合計256バイト、ROMもバンク切り替えで32KBまで拡張しているものがある模様。


Atari 2600のグラフィック/音源チップはTIA(Television Interface Adaptor)というカスタムチップだが、日本語で詳細が書かれたサイトがほとんどなかった。
まず画面の表示方法なんだが、これは今のグラフィックチップはもちろん、ファミコン世代のゲーム機とも若干違っている。
画面構成は画面背景のプレイフィールドというBG画面、プレイヤ・オブジェクト(表示数2枚)とミサイル・オブジェクト(表示数2枚)とボール・オブジェクト(表示数1枚)という構成になっている。
プレイヤは1Pと2Pの自キャラを表示、ミサイルはそのキャラの弾、ボールはテニスゲームやブロック崩しのボールを想定して表示する構成となっている。合計スプライト表示数は5枚といっていい。
元々、ブロック崩しや対戦型のシューティングゲームが遊べればそれでいいといった感じのスペックなので、むしろこんなスペックで1982年まで現役っていうのが凄すぎるのである。


レイフィールドの画面解像度は横40ドット×縦1ドット。え?縦1ドットで何を書けって?実は縦1ドットっていうのはテレビ画面の走査線1本のことを指していて、走査線位置が変わる(HBlank)ごとにどんどんCPUからTIAレジスタを書き換えていって、走査線192本、つまり192ドット分まで画面を描くことができる。
ただし、CPUが1.19 MHz(計算上走査線1本あたり76クロック分しか余裕が無い)な上にTIAへのデータ転送(CPU命令自体何クロックか消費する)もするので、走査線1本あたり3バイト分あるドット内容のレジスタを全192ドットで書き換えるのは難しく、実際の画面解像度はこれよりも更に低くなる。
また、横40ドットと書いたが、これは20ドットの画像を左右対称で画面に表示した時。実際には20ドットしか自由に書けない(もちろん左右対称表示をしない設定にも可能)。
なんでこんなメンドクサイ仕様かというと、メモリが高くて画面表示用に大容量搭載できなかったための工夫である。それにAtari 2600発売当時に考えられていたゲームはゲームのステージとなる場所が線だけで引けていればいい程度の考えなので、これで十分だったのである。今の基準で考えちゃいけない。
色は走査線1本あたり2色、128色中(基本色16色から8段階で明るさ切り替え)から選択可能。走査線ごとに色の明るさを変更していけば綺麗にグラデーション表示が可能(カラー指定レジスタは1色1バイト分しかないのでドット変更よりも楽)。ここだけはファミコンよりも優れている(ファミコンは52色中4色が4パレット、16×16ドット単位での切り替え)。


プレイヤ・オブジェクトの解像度は横8ドット×縦1ドット。プレイフィールドと同じ要領。こちらも走査線ごとにドット内容と色を変更可能。横160ドットから任意に配置。
2枚のみの表示だが、ドット内容と色が同じではあるものの1枚当たり3枚までクローンを表示することが出来て、合計6枚まで走査線ごとにキャラクターを表示可能。この機能を使用して、スペースインベーダーなどが開発された。


ミサイル・オブジェクトは横1,2,4,8ドットからの選択で単色、ドット変更不可。プレイヤ・オブジェクトの色と共通で指定などは不可能。横160ドットから任意に配置。


ボール・オブジェクトは横1,2,4,8ドットからの選択で単色、ドット変更不可。プレイフィールドの1色と共通で指定などは不可能。横160ドットから任意に配置。


音声はパルス音、ノイズ音を2チャンネル出力。16段階音量、音色16種、音程32段階。古典的なビデオゲームの爆発音やビーム音を鳴らすことが出来る。
2チャンネル分しか出せないので、効果音は一つしか鳴らない上BGMも単音、効果音二つ鳴らしたらBGMなし、となるので少々寂しい感じもする。


Atari 2600版スペースインベーダー

分身技を使用して、6体のインベーダーを並ばせている。


見た目はショボイがまともに移植されているDIG DUG

走査線あたり3枚分キャラクターが出てきたら、チラつかせて対処しているのが分かる。同じ内容のキャラクターが表示できないので分身技は使用できない。


Tricade Demo

見せ方によってはAtari2600でもここまで表現できる。


Tone Toy 2008 Demo

Atari 2600の音声レジスタを操作するDEMO。
どういった音が出せるか分かりやすい。

  • ※参考文献

英語版Wikipedia - Television Interface Adaptor
http://en.wikipedia.org/wiki/Television_Interface_Adaptor


Atari 2600 Specifications
http://nocash.emubase.de/2k6specs.htm