トミー製のおもちゃ「アトミックピンボール」の修理とACアダプタ化改造

ヤフオクで音が鳴るだけで動かないというトミーが1979年に発売した卓上ピンボールマシン「アトミックピンボール」が出品されていたので、Youtubeで分解動画や動作原理を確認してみて直せるかもと思って落札してみた。箱は無いものの、台を傾かせる足は付属していた。

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40年前のおもちゃということでネット上にも殆ど情報が載っていないが、単1電池5本で動くもので本来ならレーン・バンパー・スリングショットの下に設置された黒いプラスチックにボールが載るとキーンという電子音が鳴って得点が加算され、オレンジ色の可動部分がボールを弾くというものになっている。構造的にはモーター1個のみでこれらをすべて駆動させていて、黒いプラスチックの台にボールが載ると回転する軸に引っかかっている支えが外れて、それまでその場でとどまっていたギアが軸を一回転して可動部のオレンジ色のパーツを下側に動かしてバネの反動で上に飛び上がらすという構造。点数加算もすべてギアで構成されている。

 

上記の動画では音がないが、本来ならこの下にはスイッチとなる二枚の金属板が設置されており、押された反動でこれが接触サウンド回路が通電してスピーカーからキーンという音が鳴るという仕組み。サウンド回路もトランジスタコンデンサ・抵抗のみで構成されており、壊れたとなったら汎用部品だけで完全に入れ替えることもできる。

必要な電池の数が5本と中途半端だが、うち4本はモーターの回転と点滅するランプに直結する6V用と、あとの1本はスピーカーを鳴らす1.5Vに分かれているだけ。音が無くてもいいというのなら実は4本だけ差すだけでも遊べたりする。

Classic Game Roomによるプレイ中の動画

整備不良で左バンパーにボールが引っかけるシーンがあるが、正常な台なら問題なく弾く。

 

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単純な構造ながらも合理的かつ機能的になっているが、単純なので故障していても直せる可能性があるということでもある。ということで、動かした衝撃で脆くなっていたパーツが壊れる可能性もあるので届いてからあえて動作確認せず、何の考えもなしに各パーツをすべて分解してウェットティッシュで拭いて清掃して、ギアや各プラスチックの接触面にはタミヤ製のセラミックグリスを撒布、半田付けされているところには半田を盛り直してみたら、それだけで動くようになった。ただ電池ボックスの+-が接触する金属板がヘタっていて電池を入れてもボロッとこぼれ落ちたりするので、金属板を外して工作用の電池ケースを直結して導線を繋げて試してみた。追記しておくと、各ネジのネジ穴がプラスチックで作られており、40年前の代物ということで自然劣化もあるのか外す際に削れて穴が割れたり再度ネジを付けられなくなる箇所があった。幸いにも割れた箇所はすべて電池用の金属板を取り付けるネジ穴だったので良かったが、修理するために分解する際はネジ穴がダメになるリスクも考えてやったほうがいい。

にしても動かしている最中は駆動音が相当に煩い。例えて言うならキッチン用のミキサーと言えば分かりやすいだろう。6V駆動のモーターを延々と回し続けているのだから当たり前か。

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このままでも遊べなくはないが、電池ケースが邪魔だしなにより電池が切れたら交換する必要があったり充電式電池にしても入れ替えが面倒なので、ACアダプタで動かせるように改造してみた。

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回路は上記の通り。6VのACアダプタを使って、単1電池4本が繋がっていた線はそのまま6Vを流す、1.5V側には三端子レギュレータ「BA15DD0T」を使って6Vの電圧を1.5Vに落として単1電池1本が繋がっていた線に流している。-端子が6V側にしか繋がってないが、1.5Vの-端子に上記の回路を繋ぐと1.5Vに6Vが供給されてしまうので繋がなくていい。

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組み立てた回路。ユニバーサル基板にほぼ回路図通りなパーツの配置で載せる際も考えることもなく楽。レギュレータにヒートシンクを取り付けたが、単一電池1本で動くようなものでそこまで消費電力も高くないはずで、無くても問題ないとは思うけど念のため取り付けている。長さ3cmのM3ネジを立ててみたが、既存の電池ボックスにちょうどいい大きさで収まる。電池ケースの蓋に指を引っかけるために設けられている穴があってそこからACアダプタのケーブルを外に出し、ケースを一切傷つけることなくACアダプタ化することができた。

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ついでにフィールド天板の透明プラスチック部分や下のイラストの描かれた金属板とボールをタミヤコンパウンドの3種(粗目・細目・仕上げ目)を使って磨いてみた。完ぺきではないが届いた時よりは傷は目立たなくなり、ウェットティッシュで落ちなかった汚れも一緒に落とせたように見える。

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無事完成。

ACアダプタを繋いで電源を入れても、コンデンサが爆発したり火や煙が吹くこともなかった。電池を気にせず遊び放題だ。ボールがバンパーに当たる度に派手に弾かれ、キンキンという音もなってくれる。

ただ、電池で起動していた時よりもサウンドの音量が小さくなった気がするけど、単なる気のせいなのか、年代物なので遊んでいるうちにサウンド回路が壊れてしまったのか、それともACアダプタ化の弊害かは正直わからずじまい。

 

このアトミックピンボールを設計や製造を担当した人々には、まさか発売から40年近くも立って当時を知らない人間が整備して遊ぶというのは想定していなかったかもしれないが、本来なら物置でほこりをかぶったままになっていた、最悪そのままゴミとして捨てられていたかもしれないものを、またこうして本来のおもちゃとして遊べるようになったことは本望だろう。

 

※追記

って電圧間違えてて6Vじゃなくて3Vが正解だよな。電池2個をそれぞれ並列に繋いでいるんだった。サウンド回路は1.5V駆動ではなくて単一電池5本全部を流す4.5V駆動が正解。

Tomy Atomic Pinball - Jeff's Pinball Pages

上記のサイトに掲載された回路図を確認

6V駆動でも問題なく動いちゃってたので外付け電池でテストした段階で気づかなかった。とりあえず1.5V電源を使わず今までの1.5Vのプラス側の配線を本体スイッチにつけ直してスピーカーの音が大きくなり動くことを確認したけど、定格の二倍の電圧をかけ他状態のままでモーターや電球が過剰に発熱したり問題があるようだったら、レギュレータを3.3V出力に置き換えた回路を作り直してもう少し大きめのACアダプタにしよう。

 

※再追記

結局レギュレータ3.3V品に交換

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回路図

 

これでも0.3V分の過剰電圧だけど、6Vでも動いていたのでまだ大丈夫だろう。スピーカーもそのまま3.3V供給だが、自然な音量でなるので特に問題なし。